テレビにおける瞬発力と下準備と酒井法子　ミッツ・マングローブ

　ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの連載「今週のお務め」。17回目のテーマは、「酒井法子さん」について。

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　TOKYO MXで放送されている「5時に夢中！」という番組があります。間違いなく日本一ふざけた情報番組です。マツコさんや北斗晶さん、岩井志麻子さんといった猛獣・珍獣たちが日替わりで出演しており、私も2010年から金曜日のアシスタントMCをやらせてもらっています。
　金曜日はレギュラーコメンテーターの中尾ミエさんに加え、毎週違うゲストを迎えての放送なのですが、先日「今までのゲストでもっともやりにくかった人は？」と訊かれる場面がありました。

　文字だけで見ると、かなり失礼千万な質問ですが、こうしたやり取りが常に飛び交うのが、この番組の持ち味で　もあります。おそらく600人は下らないであろう歴代ゲストを思い出しながら、私はベストな答えを探すため、瞬時に様々なパターンを考えました。こういう時はあまり迷ってはいけません。だからと言って雑に誰かを腐してもダメです。視聴者や共演者が共感しにくい「ガチ」の名前を挙げる場合も、それ相応のエピソードがしっかり用意されていないと面白くありません。
 

　3秒ほど考えあぐねた結果、私の「思考」が辿り着いてしまった答えは、テレビ的には最悪なものでした。「やりにくいゲストなんていない」。これを言ったら元も子もないというやつです。

　別に良い人ぶりたかったわけでも、事なかれ主義を貫きたかったわけでもなく、完全なる記憶力と瞬発力と下準備の欠如によるもの。もちろん口には出しませんでしたが、代わりに要領を得ない言葉を延々と垂れ流し、貴重な時間だけを無駄にして、次の話題に移りました。
 

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ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ／1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場～語り亭～」「5時に夢中！」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

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