二つ目が膵臓にできる「のう胞(液体のたまった袋)」です。
「膵がんの多くは膵管の細胞ががん化してできます。膵臓に膵管内乳頭粘液性腫瘍という、のう胞状の腫瘍ができると、それ自体ががん化したり、膵管内乳頭粘液性腫瘍がない部分の膵臓に膵がんが発生したりするリスクが高くなります。のう胞は、人間ドックなどで受ける腹部の超音波検査で見つかります。のう胞が見つかればCTやMRI検査で詳しく診て、膵管内乳頭粘液性腫瘍と診断、もしくはその疑いが強ければ3~6カ月後に再度確認し、その後も定期的に経過を観察していきます」
三つ目は遺伝で、特に両親、兄弟姉妹、子どものうち、いずれかに膵がんになった人がいる場合です。2人以上いる場合は「家族性膵がん」といって、膵がんを発症するリスクがさらに高くなります。この場合、どのくらいの頻度で、何の検査を受ければいいのかというところまでは確立されていませんが、定期的に超音波検査などで膵臓をチェックしてもらうと安心です。
危険因子に注意していれば早期発見の可能性が高くなる
上坂医師が三つの危険因子を強調するのは、これらのことに気を付ければ、膵がんを早く見つけられるかもしれないからです。膵がんを治す最も有効な方法は、手術です。しかし膵がんと診断された時点でがんが進行していることが多く、手術ができるのは2~3割程度。早期発見のための効果的な検診方法がなく、痛みなどの自覚症状が出て受診したときには進行しているケースが多いのが現状です。
ただし、自覚症状の中でもからだが黄色くなる黄疸(おうだん)で見つかる場合は、手術ができる段階であることもあります。膵臓の中でもからだの右側、十二指腸に接している膵頭部にがんができた場合、胆汁の流れが悪くなり、血液中に胆汁があふれ出て黄疸になるためです。

術前・術後の抗がん剤治療によって、生存率が上昇
超音波検査や血液検査の「血中膵酵素、腫瘍マーカー(CEA、CA19-9など)」の値などによって、膵がんが疑われたら、CTやMRI検査、超音波内視鏡検査(先端に超音波画像装置がついた内視鏡を使用する検査)を受け、組織を採取するなどして診断します。