早期発見が難しく、診断されたときにはすでに手術ができないケースが多い膵(すい)がん。しかしがん薬物治療の進歩などによって、近年は手術ができる人、治る人が増えてきています。膵がんになりやすい人や気をつけたい症状、治療の進歩などについて、解説します。

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 本記事は、2024年2月下旬に発売予定の『手術数でわかる いい病院2024』で取材した医師の協力のもと作成し、先行してお届けします。

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 2019年に膵がんと診断された人は、4万3865人(男性2万2285人、女性2万1579人。「国立がん研究センターがん情報サービス『がん統計』全国がん登録」)。2000年には約2万人だったので、20年の間に2倍以上増えていることがわかります。膵がんは高齢になるほどかかりやすくなるので、人口の高齢化による影響はありますが、その影響を除いたデータ(年齢調整罹患率)でも、増加していることがわかっています。高齢化の影響を除いた死亡率をみると、がん全体では減少していますが、男性では膵がんの死亡率だけが増加しています。40年近く膵がんの手術を専門としている、県立静岡がんセンター総長の上坂克彦医師も「驚くほど増えている」と話します。

「人口の高齢化以外の明らかな原因はわかりませんが、膵がんの危険因子を考えると、生活習慣の影響があるのではないでしょうか」

 膵がんの危険因子としては、喫煙や飲酒、肥満などがありますが、上坂医師が強調するのは三つの危険因子です。

「一つは生活習慣病の代表である糖尿病です。『鶏が先か、卵が先か』の議論もあるのですが、糖尿病の人は膵がんになりやすく、膵がんの人は糖尿病になりやすくなります。健診などで指摘されたことはなかったのに突然糖尿病と診断された、もしくはすでに糖尿病を発症していて急に悪化したという人は、膵がんを発症しているサインかもしれないので、要注意です。糖尿病の人は、定期的に膵臓をチェックしてもらうことも大事です」

 膵臓は食物の消化に関わる膵液を分泌するほか、血糖値を調節するホルモンである、インスリンを分泌する働きがあります。膵がんが発生すると、インスリンを分泌する働きに影響が出て、急に糖尿病を発症したり、悪化したりすることがあるのです。また、糖尿病の人はそうではない人に比べて、膵がんになる確率が約2倍になるとも言われています。

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上坂医師が強調するのは危険因子2つめ、3つめは?