日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「不妊治療」について、鉄医会ナビタスクリニック内科医・NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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先日、日本のある番組(※1)にサンディエゴからオンラインで出演しました。テーマは、2022年に保険適応となった「不妊治療」についてでした。
実は、世界一の不妊治療大国である日本。国立社会保障・人口問題研究所調査(2021年)によると、日本では約 22%の夫婦が不妊治療の経験があると言います。
また、日本産婦人科学会の調査によると、2021年における体外受精の治療件数は、年間約49.8万件(※2)。13人から14 人に 1 人は体外受精で誕生しているため、小学校の30 人ほどの 1 クラスに 2人から3 人はいることになり、決して稀ではないのが現状と言えます。
成功率60カ国中最下位の日本
しかし、不妊治療大国でありながら、日本における体外受精の成功率は、世界60ヵ国の中で最下位なのだといいます。不妊治療の先進国として知られているアメリカでは、年間約33万件(2020年、CDCのデータより/※3)の体外受精治療件数。そのうち、約 8 万 4000 人が誕生しているため、約 25%の割合で誕生していることになります。一方の日本(2021年)はというと、年間49.8万件(※4)の体外受精治療件数から約7.0万人が誕生していることから、約14%の割合で誕生していることになるというわけです。