アニサキスの幼虫=東京都健康安全研究センター提供

知られていない「アレルギー」

 また、あまり知られていないが、アニサキスの生死に関係なく、その分泌物も含めてアレルギーを引き起こすことがある。 

 食べた後にじんましんや下痢などの胃腸症状を引き起こすほか、呼吸困難などのアナフィラキシーショックを起こす危険性もある。アニサキスが持つ成分に対する抗体を保有している人は発症する可能性があり、怖い存在だ。

  アニサキスによる食中毒が劇症化する事例では、アレルギーも併発している可能性があるという。

 「魚を刺身やたたきなどで味わうことを好む日本人の食文化を考えると、アニサキスアレルギーをもっと知ってもらう必要があると思います」

  と、嶋倉准教授。例えばサバのアレルギーだと思われていた患者を検査すると、アニサキスアレルギーだったという報告もあるという。

「魚を食べると、たまにじんましんなどの症状が出る人は、医療機関で検査をしたほうがいいかもしれません」

   生魚を食べるわれわれには身近な厄介者の存在を、しっかりと知っておきたい。

(AERA dot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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