資産所得倍増、資産運用立国と続けた政策に手応えを感じたのだろう。岸田首相は、さらに資産政策第3弾を打ち出した。冒頭に紹介した「資産運用特区」である。海外の資産運用業者を日本に誘致して、日本株に投資してもらうために行政手続きの英語化に加え、運用を担うファンドマネジャーのために住宅や子どもの教育環境を整備することまで打ち出した。至れり尽くせりである。
資産所得倍増、資産運用立国、資産運用特区。「資産、資産、資産!」という岸田首相の政策は、前述のとおり、働いて豊かになるというシナリオを諦めるという意味がある。その代わりに投資で豊かにということなのだが、まず、預金すらできない人々が多数いることを忘れているという批判がある。
金融所得で大儲けしている富裕層にしっかり税金を払わせるという元々の約束はどうなったのかという声も出るだろう。
だが、岸田氏の資産政策3連発には、もっと深刻な懸念があることを指摘しなければならない。
それは、1200兆円を超える日本の公的債務に関連する。かなり前から持続不可能だと言われ、リベラル系の経済学者などが、今にも財政破綻が起きると警鐘を鳴らし続けてきた。これ以上借金が増えると海外勢に国債を売り浴びせられて国債が暴落するとか、ハイパーインフレになるというストーリーだ。私はそんなことは簡単には起きないと見ていた。日本の家計の金融資産の多くが銀行預金にとどまっていてそれが国債購入に当てられていたからだ。