しかし、今は違う。国債の残高は引き続き増えているが、それでもそれが消化されているのは、日銀が大量にこれを買い支えているからである。
日銀が際限なく国債を買うので、国債の価格は下がらず、金利の上昇は抑えられる。これにより、財政の金利支払いの負担が極端に低下している。住宅ローン金利も抑制され不動産バブルに拍車がかかる。通常の金利を支払うだけの利益も出せないゾンビ企業もそのまま生き残る。結果として、日本経済は低位安定を続けているのだ。
仮に、日銀が国債を買わなくなれば、その価格が暴落し、金利は急騰する。財政の金利負担が急増し、住宅ローン破産が増え、ゾンビ企業は一気に倒産ラッシュとなる。だから日銀は国債を買い続けて、マイナス金利政策を続けざるを得ない。
日銀が金利を上げられないのに対して、海外の金利は上昇しているから、金利差が原因で円安が進む。原油をはじめ輸入物価が上がっているのに、さらに円安で拍車がかかる。
こういう状況で岸田「資産政策3連発」が効果を発揮するとどうなるのか。
若者層に海外投資の機運が盛り上がっているが、これはすぐにあらゆる年代に広がるだろう。海外の運用会社が日本での活動を強化する時、海外資産への投資の機会は確実に増える。ドル資産に投資して儲かったという話は、巷に溢れていて、どうやって乗り遅れないようにしようかという意識も広がっている。ドル預金で年利5%といっても、為替が10円円高になったら大損なのだが、日銀が大幅な金利引き上げに舵を切ることはできないように見えるし、長期的に見れば、日本経済がジリ貧だということはほとんど自明なことのように思える。少なくとも、全資産を円で持っているより、半分はドルにしておこうと考えても決して無謀な博打ではなく、むしろその方が安全な投資姿勢である。