国内投資拡大のための官民連携フォーラムで発言する岸田文雄首相=2023年4月6日

 総裁選で金融所得課税が話題になっただけで、市場には衝撃が走った。株価が下がり、「岸田ショック」とさえ言われた。株式保有を不当に優遇する制度が是正されれば、株価にマイナスの影響が出る。誰でも予想できる話だ。

 しかし、岸田首相にとっては驚きだったのだろう。この方針は大きく後退し、ほとんど意味のない改革で終わってしまった。

 25年分の所得から、所得が30億円を超える「超富裕層」に限定して、30億円から3.3億円を引いた上で、たったの22.5%の税率をかけて税額を計算し、これが通常の税額を上回る場合にその差額を徴収することにしたのだ。対象となる人はわずか200〜300人で所得50億円でも負担が2〜3%上がるだけだという。ふざけた話だ。

 また、総裁選の時に岸田氏は「所得倍増」も掲げた。しかし、こちらも、早々に、時期は区切らないとして公約を撤回してしまった。

 広く知られているとおり、労働者の実質賃金は、安倍晋三政権の時から減少傾向が続き、民主党政権の最後の年の12年に比べて大幅ダウンしたまま。今も16カ月連続マイナスが続いている。今年の春闘で大幅賃上げが達成されたと喧伝されているが、実はこれは大嘘である。連合が発表した賃上げ率は平均で3.58%と表面的には高く見えるが、これには定期昇給分が含まれていて、本当の賃上げであるベースアップは、定期昇給とベースアップを区別できる組合の平均で2.12%に過ぎなかった。物価が3%上がっているのだから、これでは、どう頑張っても実質賃金はプラスになりようがない。

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「構造的賃下げ」になっている