現職の国会議員まで、そこに参戦する。
〈翁長知事の「オール沖縄」という名の親中反米反日勢力と共にある現職は、名護市
政をすっかり停滞させてしまった〉
〈沖縄を反日グループから取り戻す大事な選挙〉
ツイッターにそう書き込んだのは自民党の山田宏参院議員だった。
手垢にまみれた「反日」がここでも登場した。敵を設定し憎悪を煽る構図は、反基地運動に対するそれと同じだ。
ネット上にはこれまで沖縄の反基地運動への攻撃に使われてきた、さまざまな誹謗中傷が書き込まれた。
「反日」と並んで最も多く用いられたのは、やはり「プロ市民」なる文言であろう。必ずと言ってよいほど「反基地」の背景に持ち出されるマジックワードだ。
何やら怪しげな勢力が運動を支配し、沖縄と日本を破壊に導く――「プロ市民」はそのように位置づけられる。
米軍ヘリの部品落下事故の“現場”となった宜野湾市の保育園では、被害当事者であるはずの園長も「プロ市民」だと攻撃された。
便利な記号だ。内実はどうでもいい。憎悪を煽る犬笛として多用される。
「プロ市民」はもともと、罵倒や中傷のために使われる言葉ではなかった。
新聞紙上で初めて「プロ市民」なる言葉が登場したのは1996年9月3日付「佐賀新聞」の記事である。
同紙は武雄市内で開催された町おこしイベント「長崎街道サミット」の様子を報じた。記事にはサミットに出席した桑原允彦氏(当時の佐賀県鹿島市長)の発言が掲載されている。桑原氏は住民ぐるみで成功させた「ガタリンピック」(干潟での競技大会)について、次のように述べた。
〈鹿島のガタリンピックを地域の仲間と一緒にやってきた。今でこそ関東から高校生が参加するなどして成功しているが、初めは行政では決してできない、しかも補助金に頼らないイベントを目指した。苦労も多かったが、住民は行政の下に成り下がってはだめ〉〈“プロ市民”になろうという意識を持って頑張った〉
実は「プロ市民」は桑原氏の造語だ。政治や行政の従属者とならない自立した地域住民を意味するものだった。これ以降、しばらくの間「プロ市民」は自立協調の住民運動を好意的に伝える文脈で、各地で用いられるようになった。
その意味がいつ反転したのか。おそらく今世紀に入ってからすぐにネット上では「反日」や「非国民」といった言葉との合わせ技で、“運動叩き”の文脈で使われたように記憶している。