国防のためとはいえ、基地に隣接する地域の住民だけが、米軍機関連事故のリスクを背負わなければいけないのか。社会の一部には「沖縄だから仕方がない」という差別意識があるのだろうと、ジャーナリストの安田浩一氏は考える。さらに、基地被害を主張する人を「プロ市民」だと吊し上げることで、沖縄に基地を押し付けた負の意識を合理化していると指摘。安田氏の新著『なぜ市民は"座り込む"のか――基地の島・沖縄の実像、戦争の記憶』(朝日新聞出版)から一部を抜粋、再編集し、紹介する。
* * *
「反基地」批判へのマジックワード
全国約800の地方議会事務局に、“普天間基地の辺野古移設を求める意見書”の採択を陳情する書面が届けられたのは2015年11月のことだった。陳情書は一刻も早い普天間の危険性除去を訴えつつ、辺野古移設が唯一の選択肢であるかのように記されている。私が調べた限り、これをもとに、辺野古移設推進の意見書を採択した地方議会は19あった。
採択を働きかけたのは名護市議会の保守系議員11人である。全国に送付された陳情書をいまあらためて確認すると、そこに渡具知武豊氏の名前があった。18年2月の名護市長選で辺野古移設反対派が推す現職の稲嶺進氏に競り勝った現市長である。
これを見ても渡具知氏がもともと「辺野古移設容認」であることは明白だ。過去には地元紙の取材にも「条件付き賛成」と答えている。