大切なパートナーを失い「どうしても本を出したい」

 その翌年、大きなできごとがTomy先生を襲います。パートナーが突然この世を去ったのです。あまりにも大きな喪失感。心の空洞を埋めるように仕事に没頭するうちに、不眠の症状に悩まされるようになりました。うつ病の一歩手前だったといいます。

「かなりつらい思いをしましたが、徐々に普通に仕事をして、普通に寝て、普通に笑えるようになった。そのとき、心から『本を出したい』と思いました。大事な人を亡くした人を支えられるような本を、絶対に出そうと」

 19年にツイッターが大きくバズったのをきっかけに、Tomy先生の本は次々に出版されるようになりました。念願だった死別をテーマにした本だけでなく、夢だった小説も出版し、多くの人の心の支えになっています。そして、今年、新しい形の医療を目指すクリニックを準備中です。

「医師としての人生設計を少し変えることにしたんです。セカンドオピニオンのオンライン診療も検討していて、今後も診療は続けていきますが、軸足は執筆活動に置くつもりです」

 医師にならずに、最初から作家の道を歩んでいればよかったとは思わなかったのでしょうか?

「多分うまくいかなかったと思いますよ。作家は成功する確率が低い仕事ですから、いばらの道を進むようなもの。精神科医という本業がなければ、夢を持ち続けることは難しかったでしょうね」

医師免許という手札を持ち 別のカードを加えていく

 だからこそTomy先生は、「もし医師になりたいと少しでも思うなら、まずは医師になる道を選んで」と提案します。

「何歳からでも医師にはなれますが、若いうちの方が医学部受験はしやすいと思います。医師免許という手札を持ったうえで別のカードを増やすんです。SNS時代になって、さまざまな業種がボーダーレスになっていますが、医師も同じ。医学の道を邁まい進しんするのも素晴らしいし、医師免許を持ったうえで別の夢を追いかけることもできる。医師になることで、むしろ人生の選択肢は増えるのだと、ぼくは実感しています」

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