平坦地には森がないのでクマは非常に恐怖心を覚え、パニック状態となる。少しでも木の生えている公園、寺や神社、城跡などに逃げ込もうと移動する。
「クマは眼の前に立ちはだかるものを排除しようとする性質がありますから、移動中に人と遭遇すると、ガツンと攻撃する。なので、顔や首をやられる場合が多い。これからはそのような事故が増えるでしょう」
秋はクマにとっても実りの季節だ。里山で暮らすクマはコナラの実やクリなどを腹いっぱい食べて、冬眠に備える。しかし、ドングリ類が不作だと、食べ物を求めて大移動する。その一部が市街地や都市部に出没するという。
「クマは河川敷を伝って街に入ります。例えば、盛岡の北上川、仙台の広瀬川とか。都市は河川の周囲に広がっていることが多いので、侵入経路には事欠きません」
最後は助かる確率に賭ける
クマは臆病な半面、食べ物には目がないのが特徴で、大好物を前にすると、恐怖心が吹き飛んでしまい、居座ってしまう。そこに人間が突然現れると、クマは驚き、攻撃する。
「例えば、クマは飲食店にやってきます。換気扇はクマが大好きなカレーライスやから揚げなど、油もののにおいを振りまきます。なので、クマが換気扇に手を突っ込む事故がたくさん起こっています」
これまで米田さんは、数え切れないほどクマに遭遇してきた。
「そのうち一般的な攻撃とは違う、殺人的な攻撃で襲われたのは9回。捕まえるときに麻酔で失敗したとか、越冬穴に入ったら襲ってきたとか」
いずれも重大な事故にならなかったのは、経験によってクマの動きを読めたからだという。