クマは平野部、耕作地で異変を感知すると、直立する。撮影者との距離は6メートルほどで、こちらが動かなければ感知されない。キツネもこのように葉をくわえて立つという=2021年8月、秋田県、米田一彦さん提供

日常的にクマが家の中へ

 市街地や都市部にクマが現れるケースは、全国で発生している。

 19年10月、秋田市の住宅街にクマが侵入し、帰宅直後の男性が自宅敷地内で襲われた。頭蓋骨が折れたほか、両目を失明する重傷を負った。

 20年10月、栃木県日光市今市地区にクマが現れた。東武今市駅や道の駅「日光街道ニコニコ本陣」周辺の市街地で、普段であれば紅葉目的の観光客でにぎわう場所だ。

 最初の目撃から約1週間後、クマは専用のわなにかかった。その後、クマは人里から離れた山林に放された。

 昨年8月、岩手県盛岡市中心部の市街地で、クマの目撃が相次いだ。その場所は、JR盛岡駅から東へ約300メートルの北上川にかかる開運橋付近や、イオンモール盛岡南などの商業施設が密集するバイパス沿い、岩手大学農学部付近など。結局、被害は確認されなかったが、いずれも人通りが多い場所だっただけに、県警や自治体は1カ月近く、市民に警戒を呼びかけ続けることになった。

 そして今年も、クマの被害に関するニュースは相次いでいる。
 

クマは、倒木の上や土が露出したところで眠りたがる。マムシや害虫を避けたり、腹部を冷やしたりしているようだという=2013年7月、広島県、米田一彦さん提供

 人里に出没するクマは、「アーバンベア」「新世代グマ」などとも呼ばれる。そんなクマは、いつごろから現れるようになったのか。

 NPO法人日本ツキノワグマ研究所の米田一彦代表は、

「そのようなクマは1980年代からいました。私は90年ごろから、『集落依存型のクマ』の存在を全国に向けて発信しています」

 と話す。

 背景には高度経済成長期以降、山村から都会へ若者が流出し、集落の過疎化が進んでいることがある。人の住まなくなった家屋や庭先に植えられたカキやクリの木が放置され、そこを起点にクマの集落依存が始まったという。
 

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「家の中にも入ってきた」