写真:古舘プロジェクト提供

―「報道ステーション」のキャスターをしていたころ、古舘さんはトーキングブルースを休んでいた時期がある。「報ステ」のキャスター経験を経て、トーキングブルースは変化したのだろうか。

古舘:2014年に「一夜限りのトーキングブルース」を行っていますが、実質12年間離れていました。ただ報道ステーションも、人の生死にかかわる報道であり、掘り下げれば毎日がトーキングブルースだったともとれるかもしれません。トーキングブルースの生みの親でもある佐藤会長が目指す、「生きることの中にある哀しみや喜び、憂いの源」に近づけたと思っています。本当の哀しみと向き合わなければたどり着けない境地です。それが「喋りでブルースを奏でる」ということであり、私の原点であり究極、目指すところです。

論破よりライトグレー

―舞台でのライブ体験を大事にしている一方で、最近はユーチューブでも積極的に配信を続けている。

古舘:ユーチューブでは大手メディアが伝えていない部分を、失敗をおそれずタイムリーに即時性を優先して発信します。移動中の車中から中継することもあります。切り身にして生で出す刺し身ですね。一方、トーキングブルースは、言葉を練り込み、発酵させて「いい味」にしたものを出す場です。発酵は加減が必要で、腐ってもいない、それでいて新鮮でもない、ギリギリの揺らぎのいいあんばいの発酵で出すと、自分の思いも乗ってうまく伝わるんです。

―うまく喋れない、コミュニケーションがどうにも苦手。そんな人たちにアドバイスを求めると、意外な(?)答えがかえってきた。

古舘:僕は「心」をきれいにすればいい言葉が生まれると思っているし、一生懸命話そうと思えば、その気持ちがちゃんと相手に伝わるし、それがコミュニケーション力だと思っています。コミュニケーションって、スキルじゃない。失敗を経て磨かれていくものだし、そうあるべき。言葉が出てこなくても、語彙が豊富じゃなくても、「大丈夫? それってこういうこと?」ってお互い補填して会話しあっているのを見ると、すごく気持ちいい。会話なんてそういうもの。言いよどむほうがウェットで温かい気持ちになりませんか。

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