写真:古舘プロジェクト提供

古舘:台本はないけどメモみたいなものがいっぱいあって、それをずっと見ながら覚えています。自分がネタ元ですが、構成作家から関連会社の放送作家、外部のブレーンも入れて内容を練っていき、ネタが固まった時点で舞台監督や照明さん、音声チームも合流して作り上げていきます。聞きやすいのはダメで、わかりやすさより大事なのは切れ味。現代の信仰の話をして、ビーガンの話をしたと思ったら、また違うワードを出す。そのためには構成が大事で、それを覚えます。これが結構しんどい個人作業なんです。脳内に全然違う絵を並べていくわけですから。脱線したかのように見えて、通底していたというのが醍醐味。それが面白さ、トリッキーさにつながります。自分の力だけだったら大したことない。皆の力、総意でやっているんです。

「全否定」トークに転化

古舘:たとえばお焚きあげが二酸化炭素を出すからダメとか、「神社とか寺が今の時代に媚びすぎている。今を生きるために神社に現代があると思う」と僕が感じたことを言うと、構成作家が「神田明神ではIT情報安全守護なる祈願がある」「浄土宗の総本山である京都の知恩院でもポイ活している」といった情報をくれる。それを聞いて、さらにワーッと言葉が浮かんできて録音する。メモでなく録音で記録していますから。それをまた作家が聞いて「これをカットしたほうが切れ味が良いのでは」とか「膨らませたほうが」と感想をくれる。その繰り返しで、半年ぐらいかかります。

―大幅に内容がカットされたり、構成がガラリと変わったりすることもあるのだろうか。

古舘:40〜50分カットというのもあります。「ビーガンベースにグルテンフリーを入れ込みながら低糖質やケトン体ダイエットのイメージも入れながら気のふれたような、イマドキは混合信仰にまみれている。それ意識高い系として俺もとっちゃったりするね」とか話したら、スタッフから「一秒も使えない」という。全否定でした。どこに絞って聞いていいか分からないと。これ、一生の恨みとして残りますよ(笑)。でもそのエネルギーや悔しさが、トークに転化されていますから、実はこの循環がありがたいんですよ。

次のページ