原田眞人監督の最新作「BAD LANDS バッド・ランズ」が公開される。原作は、ハードボイルド作品で知られる黒川博行の小説『勁草(けいそう)』。二人が演じるのは、特殊詐欺を生業とする姉弟だ。AERA2023年10月2日号より。
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――安藤サクラは特殊詐欺の受け子のリーダー、通称“三塁コーチ”のネリを、山田涼介は血の繋がらない姉に執着する自称サイコパスのジョーを演じた。裏社会で生きる彼らに、二人はどのように息を吹き込んだのか。
安藤サクラ(以下、安藤):初めて脚本を読んだとき、読み終えるのに8時間以上かかったんです。自分が知らない世界の話なので、専門用語もわからないし、そうした用語を検索したところで、言葉の意味が明確にわかるわけでもない。
でも、原田(眞人)監督が書かれた脚本はとてもしっかりしたもので、完成した世界観と人物像がそこにはあったので、描かれる世界にイマジネーションを働かせながら、自分のなかで登場人物たちを動かしていきました。
山田涼介(以下、山田):僕も、3回ぐらいは脚本を読み返したと思います。しっかり理解するのは難しい内容でしたが、ちゃんと自分のなかに落とし込むためにも理解したい、と。携帯電話を手元におき、「どういう意味なんだ?」と調べながら読みましたね。
どこか知っている世界
山田:物語のなかで描かれる犯罪は、ニュースを通し知ってはいたけれど、なんとなく見ていた程度でしたし、自分に関係のないこととして捉えていたので、事件として報じられても流してしまう。登場人物たちのことを擁護するつもりも、正当化するつもりもないですが「こんなふうにしか生きられない人がいるんだ」とは強く感じました。善悪の区別がつかず、ただ不器用に、これしか生きる道がないんだ、と知ってからニュースの見方も変わりましたね。
安藤:確かに、この作品に参加してから、同じような事件の報道に触れるたび、「どこか知っている世界」というか、不思議な親近感はありました。
――演じているのは、ダークサイドを生きる人々だ。だが、「悪い人を演じる」という感覚は持たずに撮影に臨んだという。