安藤:脚本を頂いてから、「いくら血が繋がっていないとは言え、山田君と姉弟風の役はハードルが高いな」と私は思っていたけれど。

山田:僕が現場でありがたいな、と感じていたのは、ジョーに対して出す安藤さんのしぐさがいい意味で雑であったこと。「はい、はい」とあしらうような感じがどのシーンでも感じられて、僕としては助かったな、救われたな、という気持ちでした。

――みなが集中しながらも、現場には和やかな空気が流れていたという。

山田:安藤さんが自然体でいらして下さったことが大きかったと思います。原田監督があんなに現場でニコニコされている姿は初めて目にした気がします。

安藤:原田監督には「厳しい」というイメージもあったけれど、ずっとニコニコされていたよね。

山田:それはきっと、安藤さんだからですよ。

安藤:一つ言ってもいい? 現場がすごく楽しかったの。この役を演じ、作品をつくっていくのがとにかく楽しくて。実際、みんなも楽しんでいたと思う。

人生の延長にある戦い

山田:安藤さんのいないシーンになると、少し空気が変わることもあったので「早く来て!」と心のなかで思っていたこともあります(笑)。現場の空気を「作る」という意識はなかったかもしれませんが、安藤さんがいることで和やかなムードになり、安心する現場でした。

安藤:テーマや物語だけの印象だと、ハードで厳しい現場だと思われるかもしれないけれど、その世界のなかで生きるキャラクター一人一人にみなで向き合っていくと、彼らの日常の延長に犯罪や殺しのシーンがある、と思えるようになる。「歩く」「埃を取る」といった一つ一つの動作の延長線上に、彼らが起こす行動があるんですね。鈍臭くしか生きられない彼らの人生の延長に戦いがある、そう感じられるアクションシーンにしたいと思っていたから、まずは彼らの生活や生き様を想像し、演じていく。面白い作業であり、純粋に「楽しい」と感じられる現場でした。

(構成/ライター・古谷ゆう子)

AERA 2023年10月2日号

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