夏井:それは何?
奥田:セックスです。
夏井:なんとなく、そこに行くと思った(笑)。
奥田:そして、子規の艶俳句を読んだ時に感じたのが、清濁併せ持つ人間の欲望だったんです。
夏井:今回、子規がこれほどの数の艶俳句を詠んでいたのは、ものすごい驚きだったけど、その驚きが去ったあと、嫌な感じが全然しなかったんだよね。裏切られた感が全くなくて、むしろ彼の創作意欲、人間性の深みを感じたというか。
その艶俳句に清濁併せ持つ子規の欲望を見ていくというのが、人間の業やエロスも含めて描ききる『るにん』の監督的視点なんだろうなあ。
奥田:いえいえ、僕はただのエロ俳句詠みだから(笑)。
そんな僕にとっても、子規の艶俳句は、百科事典のようで。「こういうエロさに、こんな表現方法もあるんだ!」というね。宝石箱のようだと言ってもいいくらい。
逆に、「子規の表現を現代的にするとどうなるか?」というのも自分自身の学びになって、楽しくて仕方なかった。
夏井:これらの艶俳句は、これまで注目されてこなかった子規の一面。それを奥田瑛二がどう味わっていくかに私はとても興味があって。
奥田:子規の艶俳句で特に興味深かったのは、「禿」が結構な割合で出てくるということ。禿を詠むバランス感と、世界の眺め方が、非常に面白い。