デカい力士と対戦するのは「やりづらい」のひとことだ。自分から攻めていって、どこで突破口ができるか、かすかな望みを抱いてぶつかるという戦い方だったね。俺のときは高見山関をはじめ、大型力士が増え始めた時期。俺も189センチと身長は高かったけど、体重が110キロくらいだったから、やっぱり体重がないと厳しいものがあった。
何度も転がされた小兵は?
そんなからだの大きさがものをいう世界にあって、小兵ながら俺をはじめ、多くの力士を苦しめたのが出羽ノ海部屋の吉の谷と鷲羽山で、二人とも同年代で何度も対戦した。吉の谷は足取りが上手くて苦手な相手だった。立ち合いのときにバッと足を取られてそのままひっくり返されてやられるんだ。そのタイミングが絶妙だったね。何度転がされたことか。
鷲羽山は関脇までいった力士で、すばしっこい業師という印象。まあ、対戦成績だけでいえば、俺が突っ張って突き出して何度も勝っているが(笑)。それから、立浪部屋の若浪関も印象深い小兵力士だ。この人は幕内最高優もしていて、立ち上がったところで懐に潜り込むのが上手い力士だった。そもそも、小さい力士と対戦するとき、俺は突き勝てばいいだけだから、そんなに気にならなかったんだ。それでも、今でも印象に残っているということは、吉の谷も鷲羽山も上手い力士だったということだね。
プロレスには巨漢レスラーは多くいるが、特にジャイアント馬場さんとジャンボ鶴田は、運動神経が抜群で、対戦するのもそんなに嫌な相手ではなかった。2人はなんでも器用にこなしてくれたから、俺も好き勝手やれる面もあったからね。こちらの攻撃をすべて受け止めてくれる大きな人という感じで、やりやすかったんだ。
俺も小さい方じゃないから、自分より小さい相手と戦うのは気持ちの面でも「こんなのに負けるわけないだろう」って優位に立てるもんだ。馬場さんもジャンボも、俺をはじめ、自分より小さい選手と戦うのは楽だったろうなって思うよ。