日本テレビ「news zero」にコメンテーターとして出演し、8月末に『パパだけど、ママになりました』(アスコム)を出版した、トランスジェンダーの谷生(たにお)俊美さん。「女性」として生きることへ突き動かしたのは、人の命が失われる戦地などでの取材経験、そして自分らしい人生を創っていくことへの思いだった。
>>【前編:トランスジェンダーの谷生俊美さんが娘のために書いた半生 幸せになるために「自己肯定感」を】からの続き
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――プライベートが明るみになることに抵抗はありませんでしたか。
晒す怖さはあります。でもそれ以上に、こういう家族の形があって幸せなんだ、ということを伝えることに意味があるんじゃないかと考えたんです。
2018年に日本テレビ「news zero」にコメンテーターとして出たときに、私という人間をすでに大きく世の中に発信しています。実際、温かなメッセージもあれば心ない言葉もあり、反響は色々でした。そういう生き方を選んだ以上、世の中に向けて正々堂々と伝えようと。
人は、わからないものは怖い。怖いものは差別する。わからないから、誹謗中傷や嘲笑をしたり、好奇の目で見たりしてしまうこともある。それが人間のシンプルな特性で、私自身を含めた誰にでもそういうところはある。ただ、私という存在が可視化されることで、トランスジェンダーにこんな人もいて、こういう家族の形があって幸せに生きているということを知ってもらえる。その認識が広がっていけば、意味があると思っています。
――見えない部分ということで、ご自身のセクシャリティーへの違和感は常に抱えてこられたんでしょうか。
トランスジェンダーとひとことで言っても、性の認識は人それぞれ程度差があって、グラデーションが存在します。幼少期から性の認識と体の乖離にどうにも耐えられない方もいれば、私の場合は、外形的な事実として自分が男性だとはわかっているものの、女性になりたいと願ってきた感じです。その意味では苦しみ続けたというよりは、その時々でなんとか折り合いをつけて生きてきました。