(撮影:小黒冴夏/衣装提供:AnotherADdress)

――執筆するなかで、感じたことはありますか。

 本業があるので、週末を中心に執筆したのが8カ月くらい。記憶をたどり、ひも解く作業は大変なこともありましたが、目に入る娘の姿に奮い立ちました。

 意外でしたが、父親との関係性が自分のなかで大きいことも感じました。幼い日に暴力を受けることもあったなかで、反骨精神が育ち、父親に圧倒的に「勝ちたい」と思っていた。

 親子関係なんて、いつまでたっても決着なんてつかないものです。親が死んでもその関係は続くので、否が応でも向き合うしかない。でも今回書いたことで、私のなかである種の「勝ち」を感じたんです。それは負かしたというよりは穏やかな満足感で、「許してはいないけど、もういいかな」と。今の気持ちを形にできてスッキリしました。

 そういった私自身の親子関係からも、娘が感じとってくれる何かがあればいいな、と思います。

>>【後編:トランスジェンダーを生きる谷生俊美さんが自著に刻んだ決意 「人が簡単に死ぬ場所」で感じた「人生とは自分を創ること」】に続く

(撮影:小黒冴夏/衣装提供:AnotherADdress)

(文・AERA dot.編集部・市川綾子)

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