岸田文雄首相が内閣改造と自民党役員人事に踏み切った。だが、国民の受け止めは冷ややかだ。解散や来秋の総裁選をめぐる様々な思惑が交錯するなか、首相は「決断の秋」を迎えている。AERA 2023年9月25日号より。
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第2次岸田再改造内閣は、9月13日の認証式を経て正式に発足。(1)上川陽子外相、土屋品子復興相、加藤鮎子・こども政策相、高市早苗・経済安保相、自見英子・地方創生相の女性5人を閣僚に起用(2)松野博一官房長官、鈴木俊一財務相、西村康稔経済産業相ら主要閣僚が留任(3)派閥均衡を維持し、「入閣待機組」も処遇──などが特徴だ。
林芳正氏を外相から外し、無役とした人事も注目された。岸田首相は林氏に「派閥(宏池会)をよろしく頼む」と伝えた。林氏は宏池会で岸田氏に次ぐナンバー2の立場。派閥の人数を増やす活動に専念する予定だ。
自民党では通常、総裁・首相が率いる派閥は入会者が相次ぎ、衆参両院の選挙でも派閥所属の候補が増える。ところが、宏池会は岸田政権が発足して2年になるのに、ほとんど増えていない。宏池会は官僚出身者が多く、「お公家集団」と呼ばれてきた。政策に関心はあっても、他派閥や無派閥の議員に宏池会入りを勧誘する幹部は少ない。その結果、安倍派、麻生派、茂木派に次ぐ第4派閥に甘んじてきた。
漏れるため息
岸田首相は宏池会の議員に会うたびに「とにかく派閥の数を増やせ」と発破をかけてきた。第4派閥のままでは政局の主導権が握れないことを実感しているためだ。実際に今回の内閣改造・党役員人事でも、麻生太郎、茂木敏充両氏という第2、第3派閥連合の壁は厚かった。最大派閥の安倍派に対しては、萩生田光一政調会長、西村経産相、松野官房長官、世耕弘成・参院幹事長、高木毅国会対策委員長の「5人衆」の配置さえ変えられなかった。第4派閥の悲哀を実感した岸田氏が、林氏を使って宏池会拡大作戦に乗り出した格好だ。
岸田首相にとって、政策のとりまとめや国会対策に走り回った木原誠二氏が週刊誌のスキャンダル報道を受けて、官房副長官を辞任したのは大きな打撃だ。首相の意を受けて衆院解散に向けた流れをつくるには、有力な参謀が欠かせないためだ。林氏がその役割を担うのか、自民党の選対委員長から横滑りした森山裕総務会長が動き出すのか。その動向も注目点だ。