AERA 2023年9月25日号より

 岸田首相は内閣改造・自民党役員人事を受けた記者会見で、賃上げ継続などのための経済対策を打ち出す考えを表明。「変化を力にする内閣」と胸を張った。「経済、社会、外交・安全保障を政策の柱として、強固な実行力を持った閣僚を起用した」とも語った。

 しかし、実際には年功序列の顔ぶれも少なくない。党役員人事で露呈した内部対立も政権運営に影を落としている。何よりも、急激に動く国際社会、経済情勢に対応できる布陣とは言えない。人事の直後の世論調査では、内閣支持率が読売新聞35%、日経新聞42%でいずれも8月とまったく変わらなかった。国民の反応が冷ややかだったことに、支持率アップを期待していた首相周辺からはため息が漏れた。

首相は「決断の秋」

 岸田政権は2年前の発足以来、多くの「看板」を掲げてきた。新しい資本主義、異次元の少子化対策、賃上げ・雇用の流動化、防衛力の抜本的整備……。だが、いずれも具体的な政策遂行には至らず、入り口で立ち止まっている。富裕層増税は頓挫、少子化対策の財源は先送り。防衛費の増額は打ち出したが、財源となる増税の詳細は固まっておらず、自衛隊員の定員確保などの課題が残っている。

 政局的な思惑が入り交じったまま衆院解散・総選挙で局面展開を図るのか、「死に体」覚悟で来年の通常国会から総裁選への道へと進むのか。岸田首相は「決断の秋(とき)」を迎えている。(政治ジャーナリスト・星浩)

AERA 2023年9月25日号より抜粋