そしてもう一つ、特に日本のレベルを大きく向上させると予感させた収穫もある。ドイツ戦で実現した板倉滉(26)と冨安健洋(24)のセンターバック(CB)コンビの結成だ。
「強者」の戦い方
同世代ながらこれまではどちらかがケガで離脱しているケースがほとんどで、2CBとしてプレーすることがなかった。2人は相手に寄せられても全く動じることがなく、ビルドアップを安定させる。さらに重要だったのは、背後を取られるリスクを承知で積極的にディフェンスラインを押し上げられる点だ。まさに守備スキルの高さがなせる業で、それが陣形全体をコンパクトに保つことにつながり、高い位置から相手にプレッシャーをかけることを可能にした。
果たしてドイツ戦では前半に主導権を握ってリードを奪い、後半は5バックを採用して相手の強みを封じ込め、カウンターから追加点を奪って4対1で勝ち切った。
後ろに人数を割く5バックの採用を批判的にとらえる向きもあるが、相手の強みを消し、リードを広げるその戦い方は、弱者ではなく強者のそれだった。
続いて臨んだトルコ戦では中2日の試合でもあり、「選手層の拡充」をテーマに先発10人を入れ替えた。右サイドバックを務めた毎熊晟矢(25)、右ボランチで初先発の伊藤敦樹(25)はアシストや得点といった結果を出し、インパクトを残している。
後半は押し込まれたものの、メンツが変わる中で常にリードを保ち、4対2で勝ち切ったことは代表歴の浅い選手たちにとって大きな自信になるはずだ。
トルコ戦で主将を務めた田中碧(25)は「ドイツに勝つことを普通にしなければいけない」と言った。その言葉が示すのは、憧れる段階はすでに過ぎているということ。少なくともその点において、日本は「大国を超える」準備を整えている。
(ライター・佐藤景)
※AERA 2023年9月25日号