9月の欧州遠征で2連勝を果たしたサッカー日本代表。強豪相手に主導権を握る戦いぶりは、さらなるレベルアップを予感させた。AERA2023年9月25日号より。
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「憧れるのはやめましょう。憧れてしまったら超えられない」
今年3月のWBC決勝の前に大谷翔平が発した台詞を、アウェーの地でドイツを破った日本の選手たちの戦いぶりを見て思い出した。彼らにとってワールドカップ(W杯)を4度制した国は畏敬の念を抱く対象ではなくなっている。
「互角以上にできるというのを感じていました。最初からある程度、自信はありました」
左サイドハーフでドイツ戦に先発し、勝利に貢献した三笘薫(26)は、こう語った。
「積み上げぶつけたい」
カタールW杯で日本がドイツとスペインを破り、世界に衝撃を与えてから10カ月。大国撃破の自信を携えた選手たちは、所属クラブで日常的にトップ選手と対戦し、その自信をさらに膨らませている。ドイツ戦が素晴らしい内容になったのは、こうした心理面の変化がベースにあったからだろう。
それと同時に語り落とせないのが、戦術面の成功だ。
第2次森保体制は3月、6月と活動を行い、ベスト8の壁を破れなかったカタールW杯の反省を踏まえて「積み上げ」を進めてきた。3月はまず、ボール奪取後の振る舞いに修正を加えている。
W杯時の日本はボールを奪った後、相手のプレスをかわせず連続攻撃を浴びて、たびたび自陣に押し込まれた。そこでビルドアップ(攻撃の組み立て)の局面でサイドバックが内側に入り、積極的に組み立てに参加するスタイルにトライした。
続く6月はサイドバック、インサイドハーフ、ウイングが入れ替わりながら攻撃を仕掛ける形(ローテーション)を磨き、相手の守備を崩すコンビネーションの確立に力を注いだ。加えて攻撃の優先順位も整理・確認し、縦への意識を改めてチームで共有している。
森保一監督は欧州遠征前に「積み上げをぶつけたい」と話したが、その言葉通りに実践。結果は欧州勢に2連勝。進む道が正しいと確認できたことは、今回の遠征の大きな収穫だろう。