ジャニーズ事務所が「帝国」と呼ばれるほどに力を持つことになったのは、ここ30年の間のことだと思います。帝国が築きあげられ力を維持していく、そういう視点で比べればジャニーズ事務所の力関係は、自民党政治にも似ている部分があります。小選挙区比例代表並立制導入から同じくほぼ30年、自民党は十数年前に一旦は下野したものの、その最大の恩恵を受け、政権を維持しています。それぞれトップにカリスマがいて、長らくその首に鈴をつけられなかった、そんな状況も似ています。みんなまあまあ儲かっているからそれでいい──そんな体質が体制を許してきたのでしょう。
政治が矮小化され、時々の自分たちの利害関心だけで大きく変わっていくと、そのツケは全部国民に回されます。今回の内閣改造でいえば、誰がどんな役職に就いたのかに一喜一憂することなく、いい加減、観客民主主義から脱却していかないといけません。
◎姜尚中(カン・サンジュン)/1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍
※AERA 2023年9月25日号