姜尚中(カン・サンジュン)/東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史
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 政治学者の姜尚中さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、政治学的視点からアプローチします。

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 今回の内閣改造には何のための内閣改造なのか、そのミッションが見えてきません。内閣改造をするならば、やはりそこにある一定のビジョンがあるから改造人事をやるわけです。しかし、それがないままに党内の言わば利益分配ならぬ役職分配で、前回は大臣にありつけなかった待機組にうまく役職をロンダリングすることで「岸田内閣よろしくね」と、政権基盤を強化するために改造を強行したとも言えます。すべて政権の延命のためです。

 本来の改造人事は、どんな問題を課題として設定して、そのためにどういう適材適所で人物を配置するという課題解決型でなくてはいけないはずなのに、安倍政権以降、権力の再分配による役職分配によって政権の延命を図るための内閣改造が当たり前になっているようです。

 この構図は、ある意味でジャニーズ事務所も似ていると思います。先日の会見で新社長の発表がありましたが、問題の元凶の周辺にいたインサイダーたちが改革の主体になっているのですから、問題は切開されないでしょう。組織内の権力の再分配で、世論の風圧を凌ごうとする姿は、牽強付会を承知で言えば、自民党の「改革」「改造」とダブってしまいそうです。

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