9月7日は惚れ惚れするほど綺麗な夕焼けだった。そんな西空に吸い込まれるようにNHKホールに入った。山下達郎のライブである。「僕は一ミュージシャン。パンデミックや戦争とか、いろいろなことが起こりますが、僕の音楽が少しでも皆さんの癒やしや憩いになれば」との言葉通り、たっぷり3時間、すべてを忘れて彼のパフォーマンスを楽しんだ。
長年バンドに帯同したギタリスト佐橋佳幸が卒業し、今回から鳥山雄司に。彼と僕とは大学同期、共通の知人もいる。学生時代にソロデビュー、いつまでも初々しく端正な顔つきの彼は音楽プロデューサー、アレンジャーとしても日本のポップス界の第一線に立っている。初めて言葉を交わしたのは、確かユーミンの還暦パーティーの時だった。
「がんばれ!」と祈りながら彼のプレイを見つめた。ステージに向かって達郎さんの左側で鳥山がギターをつま弾く。正確で思慮深いカッティングの合間にはっとするようなプログレッシブなフレーズが顔を出し、伝統の達郎サウンドに新たな輪郭を付与しようとする彼に僕は心の中で快哉を叫んだ。
僕らは山下達郎のデビューからブレイクまで同じ時代を過ごしたのだ。ステージで音楽を奏でる鳥山雄司と客席から手拍子を送る僕。僕らは尊敬してやまない先達、山下達郎の音楽世界にいた。アンコールは笑顔と温かい拍手に包まれ、客席から「久しぶりに本物のライブを観た」という声が聞こえた。
終演後、NHK西口から夜更けの奥渋ストリートを歩いた。