星野源(写真右)とオードリー若林
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 Netflixで8月に配信開始された『「LIGHTHOUSE」~悩める2人、6ヶ月の対話~』の企画内容が「星野源とオードリー若林のトーク番組」であると聞いた瞬間、「なるほど!」と思った。たしかにこれほどふさわしい組み合わせはない。音楽家・俳優の星野と芸人の若林。それぞれ専門とするフィールドは違うが、人間としてのあり方は重なるところが多いように見える。

 彼らに共通するのは、人生で直面するあらゆる問題の前で立ち止まり、そこに向き合い、思い悩み、どこまでも考え続けてしまうことだ。適当にごまかしておけばいいとか、いったん飲み込んでおけばいいとか、ノリで何とかすればいいとか、そういう応急処置ができない。

 ちゃんと傷つくし、腹も立つし、絶望する。それでも彼らは人一倍敏感で繊細であることをやめられない。いちいち立ち止まり、いちいち考えてしまうこと自体が、彼らの偉大な才能であると同時に、どうしようもない癖(へき)である。

 彼らが文筆家やラジオパーソナリティとして評価されているのは、その思考の深さに裏打ちされた「誠実に書くこと」「誠実に聞くこと、語ること」のクオリティが圧倒的に高いからだ。

 彼らは1人で文章を書いたり話したりしていても面白いし、誰かと語り合っても面白い。『タモリのオールナイトニッポン』の「星野源×タモリ」、『欽ちゃんとオードリー若林のあけましてキンワカ60分!』の「若林正恭×萩本欽一」などは、ラジオ史に残る名対談だった。

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語りとしても聞き手としても一流