――訴訟だと補償の額はいくらくらいでしょうか。
被害の頻度や期間などによってケースバイケースで、何とも言えません。例えば民事裁判の場合、補償の額を決めるよりどころとなる現在の基準では、一般的に口腔性交や肛門性交といった重いケースでは300万円程度でしょうか。ただ被害を受けた当時の年齢や、被害そのものや被害後の状況などによってかなり違ってきます。
――ジャニーズ事務所が今後定めるとみられる補償や救済の基準のあり方は。
ジャニーズ事務所が設置した外部専門家からなる再発防止特別チームが8月にまとめた調査報告書は「補償に関して知見と経験を有する外部専門家(民法学者等)」から意見を聞いた上で基準をつくるべきだと提言しています。
しかし、裁判での基準のようになってしまうと補償の額は低くなりかねません。ジャニーズ事務所の性加害の場合は被害の規模も大きく、長期間にわたります。ですから、あまり厳密な基準をもうけるべきではないと思います。
今回のケースは、一定の地位や権力を持った人が被害者との間にある支配関係を利用して虐待を行うという意味で、性加害においては典型的なパターンと言えるでしょう。
特に被害者が年少者の場合、被害の意味が分からなかったり、加害者に対して強い姿勢を取れなかったりしたために被害を受けてしまうわけですから、被害を訴えるまで時間がかかることが多い。中には何年間も苦しめられ、何の補償もなされずに報われない人もたくさんいます。今回の件に限らず、そういった被害者を救済する仕組みをもっと充実させる必要があると感じています。
(AERAdot.編集部・池田正史)

