右から、会見に臨む木目田裕弁護士、藤島ジュリー景子氏、東山紀之氏、井ノ原快彦氏

 ジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川元社長による性加害問題をめぐり、同社は9月7日、被害の救済に取り組む姿勢を示した。ただ具体的な補償の仕方や金額は、これから検討するという。性犯罪の被害者支援に取り組む弁護士の上谷さくらさんに、補償や救済のあり方を聞いた。

【ジャニーズ記者会見で評価を上げたのはこの人】

――ジャニーズ事務所の記者会見を見た印象は。

 会見で「法を超えた救済や補償が必要」という姿勢を示したことは一定の評価ができます。具体的な中身が決まっていない段階であいまいなことを言うよりは、まず、そうした決意をしっかりと示せたことは重要です。

――ジャニーズ事務所は今後、被害者の救済や補償にどう取り組んでいくべきでしょうか。

 被害がより重い方に合わせる形で一律的に補償する方法が望ましいと考えています。より迅速で、公平な救済が可能になるためです。

 民事裁判などにおいては、被害の事実をめぐる立証活動を経た上で事実認定をし、それぞれの事実に応じて賠償の額を決めていきます。さらに時効などの問題もありますから、今回の件はそもそも訴訟には向いていないと思います。

 ジャニーズ事務所が個別に補償する形になると、やはり事実認定にはある程度詳細なヒヤリングや検証が必要になるでしょう。被害者にとっては心身ともに負担が大きいため、被害を訴えられない人も出てきてしまう。特に今回のケースでは、かなり昔のことも含まれます。被害者も未成年者が多く、記憶が薄れていることも想定されます。

 また、個別に補償の額を決める形だと、被害者同士で補償の額を比べたりして、不公平感が生まれかねません。上限に近い額の補償が受けられれば、より多くの納得が得られると思います。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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性加害においては典型的なパターン