今日、展覧会などで「アウトサイダー・アート」(OA)という言葉を目にすることが増えた。本書は美術評論家が、OAのなりたちや国内外の代表的な作家について紹介したものだ。
 OAは一般的に、美術の公的教育を受けない障がい者や犯罪者などによる芸術を指す。障がい児施設で育ち、清掃作業員などとして働きながら300枚に及ぶ水彩画を残したヘンリー・ダーガー、関東大震災で生活基盤を失い、入所した知的障がい児施設で貼り絵と出会った山下清……本書に登場するのも実際、貧困や被災によって孤独な環境に置かれた作家たちだ。彼らは美術界でのステップアップではなく、ただ心の拠り所として芸術を必要とした。しかし、彼らを単に「特異な存在」と理解すると本質を見誤る。そもそもすべての芸術家は本来的に「孤独」だと著者は言う。にもかかわらず作品は「イン」と「アウト」の芸術作品に区分される。そこに潜むのは、美術制度のなかの「差別」の問題なのだ。単なる教科書ではない。読み手にも「美術」の境界を問い迫る挑戦的な一冊だ。

週刊朝日 2015年5月8―15日合併号

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