
彼らはこのネタを引っ提げて『アメリカズ・ゴット・タレント』などの海外のオーディション番組にも出演したことがある。ワールドクラスの音ネタが「耳心地いい-1」の舞台でも評価され、見事に栄冠を勝ち取った。
お笑いの世界では、音楽や歌を取り入れたネタは「歌ネタ」「音ネタ」「リズムネタ」などと呼ばれ、1つのジャンルとして定着している。2013~2021年には毎日放送主催の「歌ネタ王決定戦」というお笑いコンテストが行われていたこともあった。
音楽ネタは強力な武器
音楽はお笑いにおいて強力な武器になる。ネタの中に心地よい音楽的な要素を入れることで受け手の心理的なハードルを下げたり、笑いを増幅させたりすることができる。コミックバンドやボーイズなど、音楽と笑いを融合させた芸を見せるパフォーマーは昔から存在していた。
「耳心地いい-1グランプリ」という企画では、そんな音楽系のネタの概念を拡張させて、「耳心地の良さ」という新しい基準を作ったところが画期的だった。
実際のところ、人間の耳は無意識のうちに1つ1つの音に対して心地よいかどうかの判断を下している。心地よい音を使ったネタはそれだけで受け手に好印象を残すことができる。いわゆる歌や音楽ではなくても、心地よい音というのは存在する。それを審査基準にすることで「耳心地いい-1グランプリ」はお笑いコンテストの世界で独自の地位を確立することに成功した。
昨今はお笑いコンテストが乱立していて、飽和状態にある。漫才の『M-1グランプリ』、コントの『キングオブコント』のようなメジャーな大会だけでなく、女性芸人向けの『女芸人No.1決定戦 THE W』、ベテラン漫才師向けの『THE SECOND』、若手芸人向けの『ABCお笑いグランプリ』『ツギクル芸人グランプリ』、新人向けの『UNDER 25 OWARAI CHAMPIONSHIP』『UNDER5 AWARD』など、出場者の属性ごとに無数の大会が存在している。
そんな中で、今までになかった「耳心地の良さ」という切り口でネタを評価して、この新しい分野で光る逸材を次々に発掘している「耳心地いい-1グランプリ」には、圧倒的なオリジナリティがあり、お笑い界における存在意義がある。
耳心地の良い低音ボイスを誇る麒麟・川島が仕切るこの大会は、お笑いネタの新しい楽しみ方を教えてくれる啓蒙型お笑いコンテストでもあるのだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)
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