「柱稽古編」のティザービジュアル(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

【※ネタバレ注意】以下の内容には、「最終決戦」のエピソードの一部、今後放映予定のアニメ、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。

【鬼殺隊「最強」と言われる“柱”はこちら】

鬼滅の刃』「刀鍛冶の里編」が終わり、次に予定されているのは「柱稽古編」だ。これは比較的短めのエピソードであるものの、「柱」の話だけでなく、今まで名も知らなかった若い隊士たちの、日常の姿が生き生きと描かれる。隊士らは、血のにじむような訓練の合間には仲間たちと楽しそうに笑い合うなどしており、その姿は年相応の少年である。鬼殺隊は、命をかけて仲間を守る献身性から「特攻隊」と重ね合わせて解釈されることがある。だが、「柱稽古編」に登場する隊士と「柱」たちの思いを知れば、それは誤解だとわかる。彼らが戦いに臨むときの心情、仲間への思い、未来への願いなどを改めて考察したい。

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「鬼と人間との戦い」とは何か

 鬼殺隊の隊士たちは、決死の覚悟をもって鬼と戦っている。鬼のパワーは圧倒的で、加えて、すぐに肉体修復できることもあり、鬼との戦闘は「無謀な戦い」のように見える。そのせいか『鬼滅の刃』の解釈の一部に、「鬼殺隊=特攻隊」「鬼との戦い=実際に過去にあった日本の戦争」を示しているのだと断定的に解釈しているものもある。文化人のラジオ番組や、動画やSNS上の記述にも、少数ながらも同様の意見が見られるのだが、それはあくまで印象の範疇であって、物語の文脈的にこれを肯定することはできない。

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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「鬼との戦い=実際に過去にあった日本の戦争」という解釈