これらの意見の論拠は、鬼殺隊側の「死の覚悟」を伝える描写が多いこと、隊士たちが若い年齢層で構成されていること、幸せな来世を思わせる内容(=死んだとしても幸せになれるとして恐怖を緩和させようとする要素)が含まれているからだろう。

 しかし、鬼殺隊は「軍隊」ではないのだ。国と国をめぐる「戦争」とは、戦闘目的も、集団の仕組みそのものも異なる。その違いは、鬼殺隊という「集団」の中で示される隊士たち「個」の意志と、戦闘の要になる「柱」と隊士たちとの関係の中にあらわれている。

鬼殺隊入隊までの動機と経緯

 鬼殺隊の隊士は大勢いるが、戦いの理由はさまざまだ。主人公の竈門炭治郎は「鬼化した妹に、人間としての生を取り戻してやる」ことが入隊の目的だった。炭治郎の親友である我妻善逸は、「弱い人や困っている人を助けてあげられる」ようになることが剣術の師への恩返しであり、それが自分の「幸せな夢」なのだと語っていたことがあった(4巻参照)。それ以外にも、「下弦の伍」鬼の累に一撃でバラバラの肉片にされた隊士は、生前には「俺は安全に出世したいんだよ 出世すりゃあ 上から支給される金も多くなるからな」(5巻参照)と口にしていた。

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?
次のページ
鬼殺隊は「軍隊」ではない