かつて水柱の冨岡義勇は、泣いてうずくまる炭治郎に「生殺与奪の件を 他人に握らせるな!!」(1巻)と叱りつけたことがあった。鬼を倒すための手段を示し、鬼殺隊へ入隊するまでの手助けをしながら、義勇は炭治郎に、自分の生と、大切な人の生を、「自分の意志で守ろうとせよ」という、大切なことを教えている。
『鬼滅の刃』は平和で平凡な日常が奪われないように、人間が鬼にあらがう“物語”だ。そこで守られるべきは、集団の意志ではなく、隊士たちの「個」であり、それぞれの心である。そして、仲間たちとの思い出が、今後の残酷な戦いにおいて、彼らを支える原動力になる。
柱稽古の幕間に描かれる、隊士たちの笑顔を目に焼き付けて、彼らは何を守りたかったのかを、もう一度深く考えたい。