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作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、「立ちんぼ女子」について。

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 最近、「立ちんぼ」という言葉を「字面」で見ることが続いていて、衝撃を受けている。昭和の古い差別的な小説というわけでもなく、若年女性たちが置かれている性搾取問題に関する報道や、そのコメントの中でフツーに使われはじめている印象を受ける。

 先日は、20代の女性タレントが、

「立ちんぼ女子ってよく聞くけど、路上売春なんですよね。立ちんぼ女子っていうと、ちょっと軽く聞こえちゃうというか。本当はダメなことなんですけどね」

 とコメントしていたことがネットニュースで流れてきた。一文一文にひっかかってしまう。

「立ちんぼ女子ってよく聞くけど」→ よく聞くんですか? そうなんですか!? と焦り。「立ちんぼ女子っていうと、ちょっと軽く聞こえちゃうというか」→ え? 軽く聞こえちゃうんですか? 「立ちんぼ」って、すごい重たい差別語じゃないの? と焦り。「(路上売春は)本当はダメなことなんですけどね」→ 本当はダメなことって、どういうことですか? みんな良いと思ってやっているということなのですか? と焦り、混乱である。

 また先日は、弁護士らによる法律専門ニュースサイトで、「『医者の卵』が歌舞伎町で課外実習、立ちんぼ女性に汗拭きシート配る意味『他者への共感養ってほしい』」という記事が配信されてきた。「他者への共感を養うために」「恵まれている同世代の医学生たちが」「同世代の立ちんぼ女性に汗拭きシートを配る」という記事の内容についてはここでは触れないが、「立ちんぼ」という言葉が差別語であり侮辱語である(少なくとも長い間そうであった)という社会ではないのだという事実を突きつけられている。

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フツーに使われるようになった「立ちんぼ」