イラク戦争(2003~2011年)やベトナム戦争(1954~1975年)、米西戦争(1898年)。これらの戦争について、「シナリオを作るのに長けたアメリカは、『何が起きても対応できる』力はあるが同盟国を引率する指導力はない。国際社会に希望を持たせるようなビジョンを提示できないからである」と哲学者の内田樹は結論付ける。同氏と政治学者・白井聡氏の新著『新しい戦前 この国の“いま”を読み解く』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集し、今のアメリカの軍事力について対談形式で紹介する。
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「不義の戦争」による不信の必然
白井聡(以下、白井):現状、ロシアが破綻していない原因の一つとして、予想されたほど孤立していないことが挙げられます。いわゆる経済制裁を行なっている国・地域と行なっていない国・地域を分けると、後者のほうが圧倒的に多い。経済制裁をしている国・地域はヨーロッパのほとんどの国と北米のアメリカ、カナダ。アジアだと日本、韓国、台湾、シンガポール。それからオセアニアのオーストラリアとニュージーランドなど40カ国・地域ほどです。
結局、先進国グループがロシアをやっつけようと言っているわけです。途上国グループも多くの国々が今回のロシアの侵攻はけしからんとは言っています。しかし非常に冷めていて、中南米やアフリカ、中東の国々の経済制裁への参加はゼロです。