中南米諸国が冷めているのは、ある意味当然でしょう。アメリカが「ロシアはウクライナを自分の勢力圏だから敵方のNATOに取られるのは耐え難いと言って攻め込んだ。これは帝国主義的で許されざることだからみんなで粉砕しよう」というふうに言っても、中南米諸国からすると、「はあ? どの口が言うの?」となるわけです。今までアメリカは中南米で何をやってきたか。まさに自分の勢力圏だという空間認識で、親米権力を作る、あるいは維持するために、時には軍人にクーデターをやらせたり、直接に武力介入したり、経済制裁を加えたりなどしてきました。アメリカの言うことを聞く気がしなくてももっともなのです。

 アフリカや中東の国々も同じでしょう。ヨーロッパ諸国が帝国主義的なロシアをいくら批判しても「じゃあ、お前らは俺たちを植民地にして何をやってきたんだ?」となります。結局、途上国グループでは支持が広がらないわけです。

 これほどまでにアメリカの経済制裁の呼びかけに途上国グループがついてこないのは、歴史的背景のみならず、アメリカが今回、あまりにも露骨にプレッシャーをかけ過ぎたからでしょう。「賛成しなかったら、どうなると思っているんだ」と言わんばかりの乱暴な態度を見せていたことが裏目に出て、経済制裁に乗ってくる国々のほうが少数派になってしまったのです。

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