人工降雨のイメージ図(東京都提供)
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 台風が上陸し、各地でゲリラ豪雨が相次いで発生している今夏だが、東京都では水不足の懸念が出ている。利根川水系の9つのダムの貯水率は6割台にとどまっており、小池百合子都知事は今月の定例会見で、都民に対して節水を呼びかけた。天気は運任せとはいえ、実は都は人工的に雨の量を増やす「人工降雨装置」を所有している。この装置の「実力」は。そして今夏に活躍の機会はやってくるのか――。

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 「人工降雨装置」があるのは、多摩川水系上流にある小河内(おごうち)ダム(東京都奥多摩町)。装置が設置されている「小河内発煙所」は、ダム湖西方の山梨県側と合わせて計4基ある。

「人工降雨装置は、いつでも使えるように準備はしています」

 東京都水道局の担当者は、そう話す。
 

 人工降雨の仕組みは、地上から人工的に雨の核となる物質を雲の中に送りこみ、雨を降らせるというものだ。具体的には、氷の結晶の核になりやすい「ヨウ化銀」と蒸発しやすい「アセトン」を混ぜて燃焼させ、その気体を送風ファンで上空の雲の中に送ることで、雲の中でヨウ化銀を核とした氷の粒を作ることを促し、雨を降らせる。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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