「オーストラリアでは10年ほど前からダイバーシティーが進んでいます。量販店のチラシには、当たり前のように色々な体形のモデルが載っていますし、中にはヒジャブの女性だっています」と岩城さん。
例えばCMなどではわかりやすさのためにダイバーシティーの「典型例」を並べる傾向がある。逆にそれが「ステレオタイプ」として広まってしまうことを危惧している。
「日本人はこういう人だ、と集団化されてしまうんです。そうすると集団から外れる人は居場所がない。それに集団のなかでは、多勢と異なる意見を言いにくくなるという気持ちの悪い現象が起こる。幼少期から個人の意見を言うように訓練させられる国なのにジレンマや葛藤を感じます」
みずみずしい青春小説はグローバルな視座を我々に提供してくれる。
「日本にいたら考えもしないようなことが世界にはある。どこか一部でも『あれっ』と思ったり、読んだ方の数だけ違う意見を持った方が現れてくだされば嬉しいです」
(フリーランス記者・中村千晶)
※AERA 2023年8月28日号