DJ SODAさん(写真:アフロ)

 韓国の人気アーティスト・DJ SODAさんが、8月13日の大阪での野外音楽フェス出演中に観客から胸を触られたと訴えた事件は、加害者の男性2人が大阪府警に出頭するなど、その後も展開が続いている。自身が受けた性的暴行を世に訴え、「女性の権利」をテーマにした発信に力を入れてきた、ジャーナリストの伊藤詩織さんは、今回の事件の加害者や世論に何を思うのか。

【DJ SODAさんが性被害にあったイベントの様子】

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――DJ SODAさんへの性加害事件を受けて、初めに何を感じましたか?

 まず驚いたのが、「俺も、私も」と加害者が何人も出たこと、そしてその加害を誰も止めなかったことです。私は今ドイツで生活しているのですが、海外ではちょっと考えられない光景です。#MeToo運動があったとき、「第三者として黙認する人になってはいけない」と何度も何度も語られてきたのに、その場の楽しい空気にのまれてか、大衆の中から声が上がらなかったことにがっかりしました。

 私自身、学生のころに痴漢の被害に遭ったとき、周りの人は助けてくれませんでした。電車の中でも今回のようなフェスティバルでも、自分が存在する場所で何らかの加害が起きたならば、「見て見ぬふりをしない」責任を負う。その自覚が、いまだに浸透していないんだなと思います。

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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加害者の2人が名乗り出たことについて