一方、日本経済新聞の1月15日付インタビュー記事によれば、前述の米国シンクタンクCSISの日本部長クリストファー・ジョンストン氏は、「2010年ごろは台湾有事のシナリオを話すのは不可能だった。いま日米はより率直に現実的に話し合えるようになり、……前向きな一歩だ」と語っている。

 中国の大使は、日本人の変化を戦争に向かう危険な予兆として捉え、米国の専門家は、逆に、戦争を受け入れるポジティブな変化だと捉えた。方向性は正反対だが、日本人が戦争容認に向けて驚くような変化を遂げたと見ていることがわかる。

 さらに、もう一つ、これは7月18日配信の本コラムでも少し触れたが、英国のBBCのニュースでは22年5月の段階で、すでに日本の安保政策の変化を取り上げて、「日本は静かに平和主義を放棄している」と報じていた。

 これが、海外から見た私たち「日本人の変化」である。

 今年の8月もまた、政治家は口々に「平和主義を守る誓い」のような言葉を並べ、テレビのキャスターも皆同じようなことを口にしていた。

 しかし、「何がなんでも戦争しない」という日本国憲法の誓いは生きているのだろうか。

 それとは本質的に異なる「いざとなったら戦争も辞さず」「正義のためなら戦争もやむを得ない」、そして「平和のための戦争」というようなまやかしを多くの政治家が平気で口にする今日。やはり、どう控えめに言っても、「日本の平和主義は空洞化した」と言うべきだ。

 この事実を認識することこそ、我々を正しい平和主義の道に引き戻すための第一歩なのではないか。

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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