臨床試験では、MRI画像でARIAが見つかった人は12.6%で、そのうち症状があった人は2.8%。臨床試験後に治療を継続した患者の2人がARIAを生じて死亡している。

 これについては、岩坪さんがこう説明する。

「ARIAはアミロイドβに対する抗体治療では必ず問題になる副作用で、その実態がよくわかっていなかった頃は、副作用を避けるためにごく少量の投与にとどまり、臨床試験で薬の効果が得られませんでした。

 きちんと管理ができるようになった今も、十分に注意していかなければならない症状ですが、軽度なら投薬を中断すれば回復することがわかり、臨床試験でも安全性が示されました」
 

さらに進む新薬開発

 このほかにも、どの医療機関で診療をすべきなのか、薬のやめどきはどうするのかなど、保険適用にあたっては課題が残る。

 とはいえ、アミロイドβを取り除く薬の開発はさらに進んでいる。7月に開催された国際アルツハイマー病学会で、米イーライリリーは同社が開発した「ドナネマブ」について、レカネマブと同じように早期アルツハイマー病に対する有効性が認められたと発表した。

 ドナネマブは月1回の点滴治療で、アミロイドPETでアミロイドβの蓄積が正常人のレベルまで消失したら治療を終えるという、治療のゴールまで設定されている。
 

 こうしたアルツハイマー病治療の進歩は、多くの人たちの希望の光になっていることに変わりない。

「検査や治療の歯車がかみ合って動くようになれば、さらに良い結果が生まれていくのではないか。我々はそこに期待しています」(岩坪さん)

(フリーライター・佐藤えり香)

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