「アミロイドβが塊になる前の段階の、プロトフィブリルを中心に、アミロイドをよく取り除けたことが大きいのではないでしょうか。このプロトフィブリルは神経毒性の高い分子といわれています」
エーザイは、軽度認知障害(MCI)や軽度アルツハイマー病の患者1795人について、本人と家族への詳しい問診(臨床認知症尺度、CDR)などによりレカネマブの効果を調べた。
その結果、病気の進行が27%抑えられたという結果が出た。また。脳内にアミロイドβがどれくらい沈着しているか調べるアミロイドPET測定でも、有効性が認められたという。
しかし、病気の進行が27%抑制されたといっても、どう解釈すればいいのか。
岩坪さんによると、「治験の行われた1年半の期間内でも、症状の進行を5.3カ月から7.5カ月、遅らせることができた」という言い方ができるという。
そのうえで、岩坪さん自身はこう話す。
「レカネマブは症状を消してしまう薬ではなく、進行の傾きを緩やかにする薬です。薬を使っても認知機能の低下は徐々に進んでいきます。ただ、治療をしないときよりも良い状態が長く続き、日常生活上のさまざまなことを、自分でうまくできる時間が年単位で延長できる。それはまさに、より良い状態で認知症との共生を図っていけることにもつながります」