アルツハイマーの「原因」をねらった新薬
FDAが承認したレカネマブは、アルツハイマー病の人の脳内でみられる「アミロイドβ」というたんぱく質を、まだ塊になっていない「プロトフィブリル」という小さい線維状の段階で除去する働きがある。
アルツハイマー病に詳しい東京大学大学院医学系研究科の岩坪威教授は、こう説明する。
「アミロイドβは、多くの研究者が『アルツハイマー病の根本的な原因』と考えているものです。このたんぱく質が徐々に脳の神経細胞の周囲に蓄積していくことで、アルツハイマー病が進行するといわれています」
このため、多くの製薬企業が、アミロイドβをターゲットにした治療薬の開発に着手している。
いくつかの薬の候補が開発され、臨床試験も行われてきた。しかし、米バイオジェンとエーザイが開発した「アデュカヌマブ」を除き、薬の効果が目標を達成できるまでのものはなかった。アデュカヌマブもアミロイドβの減少が認められてFDAが仮の承認を与えたが、追加で行われる臨床試験で症状の改善を示すことが、最終的な承認の条件とされている。
では、なぜレカネマブは有効だったのか。岩坪さんはこう話す。
