そして投与法については、現在は月に2回の点滴が長期にわたって必要になる。現時点では治療の終了時期が定められていないからだ。そのため、患者がまだ仕事をもっている場合など、月2回の通院は負担が大きいのではないかと考えられる。

 エーザイは自宅で注射できる皮下注射の開発を目指しているが、飲み薬のような簡便な方法にするのは「薬の特性上、難しい」(岩坪さん)ようだ。

「さらに投与期間中にも、治療によって起こりうる副作用への対応に注意が必要です」と井関さん。これについては後述する。

治療費、そして副作用は

 治療費も気になるところだ。

 レカネマブはFDAで正式承認をする前に迅速承認されたが、このときについた薬の価格は1人当たり年間2万6500ドル(約370万円。1ドル140円で計算)となる。日本で承認された場合は、健康保険で患者負担が1~3割ですむうえ、高額療養費制度などで負担額が抑えられる。しかし、国の財政を圧迫することは確かだ。
 

 そして、副作用の問題もある。

 アミロイドβは脳の血管の壁にも溜まる。そのため、レカネマブでアミロイドβを取り除くと、傷んだ血管の壁から血液の液体成分が漏れることがある。その結果起こる脳のむくみ(浮腫)をARIA(アリア)と呼ぶ。アミロイドβに対する治療法で新たに見られるようになった副作用だ。

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新薬の開発も