同時に、米国の景気が思っていた以上に強いとみられていることも円安・ドル高が進む要因になっている。
米国の中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)は昨春から始めた利上げを6月にいったん停止。ところが物価高を抑えるには不十分だとして、7月に再開を決めた。さらに8月11日に発表された米消費者物価指数(CPI)の上昇率は再び加速し、利上げは続くとの見方が広がった。
「もともと今年は利上げによる米国の景気腰折れを想定し、年後半には円安の流れは変わると見込んでいました。でも米景気は思っていた以上に強い。利上げの打ち止めや利下げへの転換時期は、もう少し後ずれするとみなさざるを得ません」(神田さん)
神田さんは、年内に1ドル=150円台乗せの可能性もあるとみている。
円安が進めばモノやサービスの輸入価格が上がり、物価高に拍車をかける心配も出てくる。
経済評論家の斎藤満さんは、今回の円安は政府や日銀の姿勢が招いたものだと批判する。
「政府は物価高への有効な手立てを打たず、日銀も緩和策をあくまで続ける方針を崩していません。円安や物価高には、企業の収益をかさ上げする効果もあるからでしょう。つまり、政府や日銀は、国民の生活よりも、政府自身の都合や企業の論理を優先していると言っていい。今の状況は国民の暮らしを軽視する岸田政権ならではの円安と言えます」