岸田文雄首相

 ドル・円相場は1ドル=145円台半ばまで円安・ドル高が進み、今年の最安値を更新している。円安の進行は家計には痛手の物価高を長引かせることにもつながりかねない。何もしなければ、政府や日本銀行への不満も募る。

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「市場では改めて国内外の金利差が意識されています」

 外為どっとコム総研取締役で調査部長の神田卓也さんはこう話す。神田さんによると日本円は今「ひとり負け」の状況だという。

「ユーロ・円相場は1ユーロ=159円台まで円安・ユーロ高が進み、ドル・円相場が1ドル=150円台をつけた昨年秋の水準をすでに大きく下回っています。英ポンド・円も年初来高値を更新しました。足元の円安・ドル高は『ドル高』だけでなく、日本円の弱さが引き起こしている面があります」

 背景には、緩和策を続ける日銀の姿勢が改めて意識されていることが挙げられるという。

 日銀は7月28日の金融政策決定会合で大規模な緩和策を部分的に修正した。国債を買い入れて長期金利の上限を0.5%に抑え込む長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用方法を見直した。

 ただし、植田和男総裁は会合後に修正の狙いについて「金融緩和の持続性を高める」などと話し、あくまでも緩和策を続ける姿勢を強調した。神田さんは言う。

「日銀の決定後に長期金利は上昇しましたが、上げ幅は限られ、今では日銀が姿勢を転換したと言えるほどのものではないとみられるようになっています。少なくても今後、マイナス金利の解除といった政策を打ち出さない限り、緩和姿勢を転換したとは受け止められないのではないでしょうか」

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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米国では利上げは続くとの見方