「集団自決跡地の碑」の前で、当時を語る生前の金城重明牧師

「2チャンネル」創設者として知られる「ひろゆき」こと西村博之氏のネット上での発言で、辺野古の米軍新基地建設に反対する「座り込み」はSNSの「ネタ化」された。ジャーナリストの安田浩一氏は、ひろゆき氏や沖縄で心を傷める人々への心無い数々の発言に怒りを覚える。安田氏の新著『なぜ市民は"座り込む"のか――基地の島・沖縄の実像、戦争の記憶』(朝日新聞出版)から一部を抜粋、再編集し紹介する。

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あまりに軽薄な「集団自決」発言

「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」

 発言の主は、米イェール大学の経済学者・成田悠輔氏だ。

 個性的なメガネをトレードマークにバラエティ番組にも引っ張りだこ。マスコミがもてはやすスター学者である。そんな成田氏がネット番組や講演で、高齢社会への対応策として高齢者の「集団自決」「集団切腹」を繰り返し主張した。

 一部で「エイジズム」「優生思想」との批判も上がったが、日本の大手メディアで、これら発言を正面から批判したものはほとんどなかった。噛みついたのは海外メディアだ。

 たとえば、成田発言を「これ以上ないほど過激」とネガティブに報じたのは米紙「ニューヨーク・タイムズ」(2023年2月12日配信)だった。同紙記事は成田氏の顔写真を掲載したうえで、「集団自決」発言を取り上げた。記事が引用したのは、21年12月17日に成田氏がネット番組「ABEMA Prime」に出演した際の発言である。

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「集団自決」が笑いを伴って語られた